爆弾発言。

つむぎ

ミリアムを実家に連れて行ってから数日が立った。
俺は結局まだここで世話になっている。
本当なら早々に出るつもりだったんだが、
グレースさんに「男手が欲しい。仕事を手伝って」と言われたのと、
俺が信頼しているテリーさんに会いたかったからだ。
そろそろ帰ってくる予定らしい。

冬本番になる前に、農家には色々準備がある。
俺はガタついた小屋の扉、荷馬車の修理や林にいってマキや薪も取ってきたりした。
RDの世話のついでに他の動物たちの面倒もみた。
にわとり、ヤギ、豚に馬だ。多いな。

林から拾ってきたどんぐりを豚に食わせたところで外から声がした。
テリーさんだ。
仕事から帰ってきたらしい。

テリーさんも俺がこの家に滞在していると知って顔を見に、小屋まで来てくれたようだ。

「やぁ、ラス!ミリアムを探してきてくれたんだって?ありがとうなぁ!」

背中をバンバン叩かれた。手がデカい。背中が痛い。勢いでどんぐりが籠から少しこぼれた。
相変わらずパワフルだ。懐かしい。

「えぇ、相当探し回りましたよ。まさか髪色や名前まで変えているとは思いませんでしたけど」

「名前まで?そこまで忍者になりきっていたのか。で、どうなんだ、腕前の方は」

腕前ねえ。。
面構えからして、パッとしないだろうなと思ってる。
ピザばっかり食ってたようだし。

「俺は戦いの姿までは見たことがないんですよ。
あの感じだとぼちぼちっていうレベルじゃないですか」

「そうか!ぼちぼちか!わっはっはっは!
2年も家出をしてぼちぼちか。しょうがないなーあいつは」

おおらかだった。

子どもの頃からテリーさんにはお世話になっている。
俺がテイマーになる時も、相談にのってもらった。
なんでも話せる人だ。

親よりも。

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夕食後、みんなでリンゴを食った。
家族団らんって感じがした。
笑顔が絶えない食卓。
常に誰かが何かを話しているこの感じ、いいよな。

お土産に持ってきたYew産のりんご酒を飲みつつ、テリーさんの話が続いた。

「ラスはテイマーが好きか?」

一瞬、酒を飲む手がとまる。

RDは好きだ。俺の相棒だ。
動物も好きだ。一緒にいると落ち着く。

だがそれは「テイマー」として好きなのか疑わしいところがある。
心のどこかでずっと感じていた。

「そうですね・・・」

はっきり答えられなかった。

「あれ、そうでもないのか?馬小屋においてあるあの立派なクーシー。
お前のだろう?好きじゃないのかい?」

「RDは大切な相棒です」

あのクーシーはとある街の首長さんから譲り受けたもの。
俺はテイムしていない。
だけどそこに愛着がないわけじゃぁない。
クーシーは育ててみたかった。
いろんな場所へ行ってモンスターと戦い傷つき、成長していった。
伸びしろはまだある。これからもっと世界を広げていきたいとは思う。

だけど。

RDやペットが戦いで傷つくのを俺は好まない。
回復手段はあるけど見てて落ち着かない。
ペットを信頼してないのだろうか、単に経験不足で不安なのかそこはまだ自分では分からない。

「俺はテイマーが好きというよりも動物が好きなのかもしれない。」

「ほぉ」
テリーさんは空になったグラスにりんご酒を注ぐ。
俺のグラスにはまだ残っていたが、もっと飲めよと並々入れられてしまった。

飲んで全部話せってことかな。

「そう確信したのは、ここに来て動物の世話をしてからなんです。
俺は宿屋の三男なんで家を継ぐことはないし、、、」

あぁ、そうだ。宿屋で思い出した。

「一番上の兄がもすうぐ結婚するんですよ。
奥さんになる人はお腹に子どもがいます。来春には生まれるそうです」

「へえ、そりゃめでたい!長男坊がいよいよ結婚かぁ。楽しみだなぁ」

話が脱線してしまった。
でも大事なことだったからな、伝えておかないと。

グラスからりんご酒がこぼれそうだったから、少しだけすすった。
この際だ、思ってることをぶちまけてしまおうか。

「いつかここみたいな農家をやってみたいなって思うようになりました。
動物たちに囲まれる暮らし、もちろん苦労することも多いだろうけど、
テイマー一本で生きていくよりもそっちの方が俺には合ってるんじゃないかなと。」

テリーさんは少し驚いた様子で俺をじっと見た。

「ふぅん。ラスはテイマーより農家の方が性に合うのかぁ。別に俺はどっちでもいいと思うぞ。
お前の人生だしな。やりたい事ってのは経験を重ねていくと変わったりするもんだしな。」

そうだな。
RDと旅をしながらどこか土地を探して畑と牧場を作ってもいいよなぁ。

テリーさんに思っていたことを話していたら、心の整理ができたような気がする。
今後の目標ができた。気持ちが楽になった。

**************************

「おっ!そうだ!いい案があるぞ!」

テリーさんはグラスの酒を一気に飲み干すと

「ラス、お前さ、俺んとこに来ないか??昔から知った家だ、遠慮はいらないだろう?
雇われって感じでさ、給料だすぞ。うちは見ての通り女ばかりだから力仕事が少し弱いんだよな。
まぁミリアムは見た目以上に力はあるけどな!はっはっは!」」

テリーさんのところで雇われか。
最初はそれでもいいかもしれない。農家のノウハウをここで教えてもらってそのうち独立を・・・

「なんなら婿養子でもいいんだぜ?」

テリーさんがにやりと笑った。

俺は身体がこわばるのが分かった。
今なにを言ったんだ。

自分の名前が出てきたからか、ミリアムがクルミをかじりながら話に割り込んできた。

「え、いいじゃん!ラス兄、うちに来なよ!動物好きだもんねえ。
うちの動物たちも、なんだかよくわかんないけどラス兄には心開いてる気がするんだよね??
お父さんも助手みたいな人が欲しいって前から言ってたし、
全然知らない人を雇うよりは、ラス兄みたいな昔から知ってる人の方がいいよねぇ。」

満面の笑みでミリアムが言った。

「んで、ムコヨーシって何?」

その場の全員の動きが止まった気がした。

「あぁ、や、まぁ。それは追々の話だなぁ。な、ラス!?」

テリーさん、酒に酔った勢いでとんでもない事を言ってしまったな。
勘弁してくれ。

「・・・そうですね」
「んんんー?なになに?何なの?」

この場の空気が全く読めてないやつが一人いる。

気まずい。

「よく分かんないけどさぁ、私はラス兄が好きだよ!
お父さんもお母さんもリマも動物たちみんなもそうだと思う!
遠慮なくうちに来ればいいよ!
わぁ、なんか考えるとわくわくしてきた!あはは!
あれ、どうしたのラス兄、お酒飲みすぎた?弱かったっけ?顔赤いよ!?」


誰かこいつを黙らせてほしい。

Posted byつむぎ

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